離乳食には悩みや不安がつきものです。いつから始めたらいいのか、どうやって進めたらいいのかわからないという不安もあれば、「昨日は食べたのに今日は食べない」という日々の変化への悩み、そして卵などのアレルゲンとなる食材のあげ方まで多種多様で、どうしたらよいのか途方に暮れてしまうママやパパも多いでしょう。ここでは、そんな離乳食の悩みや不安を解消するヒントをご紹介します。ヒントを参考にしつつ、うまくいってもいかなくても、「今日は今日、明日は明日」と気持ちをひきずらず、気負わずに進めていきましょう。
離乳食とは、赤ちゃんの成長に伴い、母乳や育児用ミルクだけでは不足してくるエネルギーや栄養素を補完するときに与えられる食事のこと。まずは、妊娠中の方、これから離乳食を始める方、そして現在離乳食を進めている方に向けて、最低限これだけは押さえておきたい8つのポイントをご紹介します。
- 離乳食はいつから? 始めるタイミング
厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」で、離乳食を始める目安の例として紹介されているのは以下の通りです。
・首のすわりがしっかりして寝返りができる
・5秒以上座れる
・スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなる
・食べ物に興味を示す
一般的にこうした特徴が表れるのが、生後5~6か月頃であり、また、栄養を補う必要があるため、このタイミングで始めるのがよいといわれています。
ただし、子どもの発育や発達には個人差がつきもの。「必ずこの時期にはスタートしなければならない」ということではありません。月齢にとらわれず、お子さまの様子を見ながら始めましょう。- 離乳食はいつまで続ければいい? 幼児食に移るタイミング
離乳食から幼児食に移るタイミングの目安としては、「形のある食べ物をかみつぶすことができる」こと。そのうえで、さらに「エネルギーや栄養素の大部分を母乳または育児用ミルク以外の食べ物から摂取できるようになっている」こと。この二つが大体できるようになったら、離乳食はそろそろ終わりととらえて良いでしょう。
一般的には生後12~18か月頃、離乳食から幼児食になることが多いですが、これもあくまで目安。少し遅くなっても早まっても問題ありません。お子さまのペースを尊重してください。- 一度始めたら、毎日必ずあげなければいけない? 旅行や外出などでお休みしてもいい?
離乳食は、開始から幼児食への移行まで約1年かけて徐々に進めていくもの。それゆえ食事に慣れるまでは、赤ちゃんも「今日は食べられない」「今日はいっぱい食べたい」など、やる気や食欲にムラがあるのが普通です。食べない時期が続いたり、旅行などで食事の準備が難しかったりするときは、少しお休みするのもひとつの方法かもしれません。成長途中ですから、お腹がすいたり興味を示せばまた食べる意欲が湧いてきます。
赤ちゃんが「食べることって楽しい!」と思えるようになるのも、離乳食の大切な役割です。親子ともども無理のないペースで進めていきましょう。- 離乳食の進め方では、どの情報を参考にしたらいい?
離乳食の進め方を示した代表的なガイドラインには以下のようなものがあります。
・厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」
・WHO(世界保健機関)の「補完食」
・一般社団法人 日本BLW協会の「BLW」
このほかにも、育児書や子育て情報のWebサイトなどにさまざまな方法が紹介されていて、どれが良いのか悩んでしまうこともあるでしょう。結論から言うと、どれでもOKです。食べさせてはいけないもの等の基本を押さえつつ、自分が使いやすい情報を選んで参考にしてください。
なお、参考にした情報と実態に異なることがあっても、目の前のお子さまが機嫌よく、楽しく食事しているようであれば気にしすぎる必要はありません。ただし、心配があれば遠慮なく管理栄養士・栄養士等に相談してください。- 離乳食用の食器やいす、調理器具を選ぶときのポイントは?
離乳食を始めたばかりの赤ちゃんは、口や体の機能が未発達のため、使用する器具によってはうまく食べられないこともあります。特にスプーンは、赤ちゃん用に開発された、ボウル幅が狭く平らで柄が長いものがおすすめです。これなら唇を閉じて固形物を取り込むことができるので赤ちゃんでも食べやすいでしょう。
開始時の体勢は、少し後傾になるように座らせると飲み込みがしやすくなります。体幹がしっかりしてきたら、足底が床や足台につく体制で、イスとテーブルは、イスに座ったときにテーブルの高さが赤ちゃんの胸のあたりで、腕が動かしやすい高さがベストです。高さが足りない場合は、クッションなどで調整しましょう。
調理器具については、最初のうちは大人用と分けて専用のものを使うほうが、菌やウイルスへの抵抗力が弱い赤ちゃんにも安心です。中期、後期になってきたら大人と同じ器具が清潔であれば、共有しても問題ありません。- 料理が苦手で自分の食事もほとんど作りません。離乳食は手作りしないとダメ?
雑誌やSNSに色鮮やかな手作り離乳食がたくさん載っているのを見て、プレッシャーを感じる方もいるでしょう。ですが、無理して作らなくても大丈夫。市販のベビーフードや冷凍野菜などを活用してください。
離乳食で大切なのは、赤ちゃんに食べる楽しさを伝えること。食事を作るのが好きな方はもちろん手作りでOK。でも、苦手な場合はプロの力に頼り、手抜きではなく「手間抜き」で離乳食を進めていきましょう。離乳食の完成度より保護者の方の笑顔が大切です。- 食事のタイミングが家族でバラバラ……離乳食を始めたら親の食生活も変えるべき?
お子さまの食事のタイミングに合わせると、まだ大人はおなかがすいていなかったり、お子さまに食べさせながら自分も食事をすると慌ただしくて食べた気にならなかったりして、食事のタイミングをずらしたい気持ちになりますよね。お子さまが複数となると、なおさらかもしれません。
ですが、赤ちゃんには成長とともに「一緒に食べたい」という気持ちが生まれてきたり、大人の食べ方を見て自然に学ぶことは多いものです。お子さまのコミュニケーション能力を育むためにも、できれば一緒に食卓を囲む習慣をつけられるのがベストです。たとえば、取り分けしやすい鍋物やおでん、具だくさんのスープなどを作っておけば、お子さまとママ、パパが同じものを食べられます。お子さまの分は水分を足して味を薄めたり、具材を食べやすくすれば取り分けが簡単です。- 予定日より早く生まれた子の離乳食、いつから始める?
離乳食を始める目安の例を参考にしながら、発達に合わせて無理せず試していきます。一般的には、予定日との差を見て、離乳食のスタート時期を調整します。例えば、予定日より1か月早く生まれたなら、離乳食の開始を1か月遅らせるというように調整し、その後は前期、中期、後期の発達の目安にしたがって進めていきます。
予定日よりも早く生まれたお子さまの場合、最初のうちは発達の差が気になるかもしれませんが、やがて追い付いてくることが多いです。医師に診てもらいながら焦らず見守っていきましょう。
離乳食のお悩みで多いのが、「食べない」というもの。まめコミ相談室にも、「食べない」に関するお悩みが多く寄せられています。離乳食の「食べない」問題を解消するには、どうしたらよいのでしょう。
- まずは、乳児身体発育曲線に沿っているかどうかを確認
お子さまが離乳食を食べない! そう感じたら、まずは身長と体重が「乳児身体発育曲線に沿っているかどうか」を確認しましょう。乳児身体発育曲線に沿うかたちで身長と体重が増加していれば、基本的に問題ないと考えてOK。もしも身長・体重が乳児身体発育曲線のラインに沿わないようなら、早めに医療機関に相談することをおすすめします。
- 「急に食べなくなった」「好きだったのに吐き出すようになった」は、食材が食べにくいか食材に慣れたサインかも
機嫌よく食べていても、「2~3日前からまったく食べなくなった」「好きだったものをべーっと吐き出すようになった」ということがあります。
これは、赤ちゃんからの「食材が固すぎて食べにくい」か「この食べ物はいっぱい食べたから慣れたよ」というサインかもしれません。食べにくそうなら、一段階戻して軟らかめにしてあげましょう。また、新しい食べ物、新しい食感のものに挑戦したいという気持ちを、食べないことで示している可能性があるので、ひとつのチャンスと捉えて、新しい食材に変えてみてもよいでしょう。赤ちゃんは気分にムラがあるため、機嫌がよくても食べないこともあります。その日は無理強いしないことです。- 食わず嫌いはあって当然
新しい食材を試そうとすると、食わず嫌いに頭を悩ませることも少なくありません。小さな子どもには「新奇性恐怖」という、記憶されていないものを怖がる特徴があり、そのせいで食わず嫌いになることが多いといわれています。「おいしいよ」と誘ったり、1歳くらいになれば「どんな味がするかな、甘いよ」「噛むとどんな音がするかな、モグモグね」などの声がけをすると食べることもあります。食べた後には「お皿、ピッカピカだね!」と褒めると赤ちゃんもうれしくなるはずです。
なお、「赤ちゃんの頃の食わず嫌いが大きくなってからの好き嫌いに影響するのでは?」と心配になる方がいるかもしれませんが、好き嫌いが最も多くなるのは小学低学年ですから気長に付き合うことが大切です。食べものに見慣れて「食べることの楽しさを伝える」ことを優先させていきましょう。- おなかをしっかりすかせることも大切
基本的なことですが、おなかがすいていないと赤ちゃんは食事をしたいと思いません。食べないと思っていたのに、いっぱい外で遊んだ日はモリモリ食べるなんてことも。しっかり遊んで体を動かし、赤ちゃんが「たくさん食べたい!」と思える状況を、できる範囲で作っていけるとよいですね。
- 食事中すぐに遊び出す……それも普通。心配しないで大丈夫!
食事中なのにすぐに飽きてしまう、泣く、叫ぶ、立ち上がる、抜け出す、遊ぶ……などもよくあること。赤ちゃんの集中力は数分しか持たないのが普通です。だからこそ、メリハリをつけましょう。テレビを消したり、「動き回って食べるのは危ないよ」「お口に食べ物が入っているときは座ろうね」といった声がけをしたりして、短い時間だけでも食事に集中できる状況を作ってみては。続けていくうちに少しずつ、食事に集中できる時間が長くなっていくはずです。手で食べ物に触れて遊ぶのは、悪いことばかりではありません。むしろ自分て食べたい意欲の始まりかもしれません。気長に見守りましょう。
- 離乳食を食べなくなりそうだけど……授乳は好きなだけあげてよい?
「離乳食を始めると徐々に授乳量が減ってきますよ」と、よくいわれます。でも、なかにはあまり減らない子もいて、不安を感じるママやパパもいるでしょう。離乳食に興味を持って、ある程度食べるようなら基本的には赤ちゃんが欲しがるだけ母乳やミルクをあげて構いません。ただし、栄養不足が考えられる場合は、授乳量を減らして離乳食に移行しましょう。1歳前後は離乳食から栄養を摂れるようにし、不足する栄養素はフォローアップミルクも上手に活用しましょう。
離乳食が進んでくると、気になるのが食物アレルギー。特に0歳児の原因食物として、卵、牛乳、小麦が多くを占めています。ですが、食物アレルギーの発症を心配して、離乳の開始や特定の食べ物の摂取開始を遅らせることは、食物アレルギーの予防にはつながらないことがわかっています。そのため、生後5~6か月頃の離乳開始時期から、少しずつ試していきましょう。
- 卵黄は加熱したものを少しずつ
「授乳・離乳の支援ガイド」にあるように、固ゆでの卵黄から始めるのが基本。おかゆにほんのちょっと混ぜてみるなどして、特に体調に影響がなければ、少しずつ量を増やしていきましょう。
卵黄を増量しても食物アレルギー症状が見られないようなら、全卵に挑戦していきましょう。- 保育園の食材リストは全部試さないとダメですか?
保育園を利用される方は、「食材リスト」を渡されて、「入園までに試しておいてください」といわれることもありますよね。ですが、季節もので今は出回っていない食材があったり、施設によってリストの食材が違ったりして、どうすればいいのか困ってしまうことが少なくないようです。
リストに書かれた食材は、食物アレルギーの有無を家庭で確認することにより、初めてその園でも与えることができるものです。そして、食べた経験が少ないと誤嚥(ごえん)のリスクもあるので、家庭でも食べ慣れることが大切です。しかし、初めての食材からアレルギー症状を起こすのではないかと不安かもしれません。例えば、小松菜とほうれん草のように似た食材の場合、アクの強いほうれん草のほうを試して問題なければ小松菜もたぶん大丈夫……というふうに考えていくと、少しはラクになるかもしれません。
また、どれくらいの量を食べさせたらOKかというのも悩ましいところですが、一口ぐらい試せばおおむね問題ないととらえてよいでしょう。旬の食材は、入園予定の保育園ともよく相談しながら、一つずつクリアしていきましょう。- 「新しい食材は午前中に」そう言われても難しいときは
「初めての食材を試すときは午前中に」と、よくいわれます。午前中に試すと、赤ちゃんの体調が急変したとしても、小児科の診療時間中に診てもらいやすいからです。しかし仕事の都合などで、なかなか難しいこともあるでしょう。
その場合は、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピー ナッツ)のような食物アレルギーを引き起こしやすい食べ物については、できるだけ午前中に試すようにしましょう。
少し大変ではありますが、工夫しながら試していけるとよいですね。
離乳食は大人用の食事とは違った特別な調理が必要なこともあり、最初のうちは慣れなくて大変と感じることもあるでしょう。ママやパパが慣れないと一緒で、赤ちゃんもまだ食事に慣れておらず、今日は食べたいのか食べたくないのかがわからなかったり、食べたことのない食材を拒絶してしまったりすることもあります。そう考えると、食べたいものへの自己主張が出るようになったり、好き嫌いをしたりするのは成長の一環といえるのかもしれません。
ママやパパは食事を通じてお子さまの成長を感じながら、「食べた」「食べなかった」に一喜一憂せず、その日その日で気持ちを切り替えて、離乳食を進めていきましょう。
参考資料
・「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」厚生労働省
・山本隆:「口腔の生理からどうしてを解く」デンタルダイヤモンド社,2007