
商品開発にも
アドバイス
頂いた
産婦人科医島田先生
インタビュー
妊婦さんと家族のための
「つわり対策」
妊娠初期から中期にかけて起こりやすい「つわり」。
人によって症状が違ううえ、有効な対策がわからず、がまんするしかない日々を過ごしている妊婦さんも多いのでは。
つわりのつらい思いが少しでも楽になる対策について、
妊婦さんとおなかの赤ちゃんを日々見守っている産婦人科医の先生に伺いました。
島田 茂樹 先生
産婦人科医 マミーズクリニックちとせ院長
1994年に北海道大学医学部を卒業。富良野協会病院、旭川厚生病院、釧路日赤病院、倶知安厚生病院(医長)、国立函館病院(医長)、北海道大学病院産科助教などを経て、2010年にマミーズクリニックちとせを開院。女性たち一人ひとりが自分らしい納得したお産ができるよう、北の大地で日々見守っている。
「ビーンスタークマム つわびー」の商品開発につながるアイデアを、雪印ビーンスターク株式会社にご提供いただきました。

つわりとは何?どんな症状?
つわりとは医学的に、「妊娠初期に起こる吐き気や嘔吐(おうと)などの症状」のことをさします。仮に妊婦さんが10人いた場合、そのうちの5~8人にはつわりがあるというくらい、妊娠中によく見られる症状です。
吐き気や嘔吐以外にも
- 食欲が出ない
- 眠気が続く
- 体がだるい
- においに敏感になる
- 味覚が変わる
- 唾液が止まらなくなる
- めまいや頭痛がする
など、人によって異なる症状があることがわかっています。
また、症状の強さも人それぞれです。ちょっとつらいけれど日常生活にはそれほど影響がないという程度の方もいれば、どんなに頑張っても起き上がれないほど重い症状の方もいます。出方や強さを自らコントロールすることができず、頑張りたい気持ちと体が言うことを聞かないこととの葛藤に悩む妊婦さんは少なくありません。
つわりの症状が出やすい期間は、妊娠初期にあたる6~12週くらいとされていますが、これもあくまで目安の一つ。いつ始まり、いつ終わるかわからないのも、つわりのつらいところといえるでしょう。

つわりの原因
つわりの原因については、いくつかの説があります。
例えば、妊娠初期に絨毛(じゅうもう:胎盤の組織の一部)から分泌される「hCG」というホルモンが原因だという説。昔からいわれていましたが、実は研究の結果、hCGの血中濃度とつわりの発症や重症度にはつながりがないことがわかっています。
ほかには、卵巣から分泌される黄体ホルモンが原因だという説や、妊婦さんが口にする食べ物や飲み物を制限し、赤ちゃんを守るためだという説もありますが、どれも決定打にかけていました。
また近年、GDF15というホルモンがつわりの原因になっているという説が発表されています。GDF15はもともと多くの臓器で微量に存在していますが、妊娠前のGDF15レベルの低いお母さんに、赤ちゃん由来のGDF15がたくさん入ってくると、つわり症状を引き起こすというものです。GDF15の上昇レベルと吐き気や嘔吐症状との関連が示されています。しかし、詳しいことはまだはっきりわかっておらず、今後のさらなる研究が待たれます。
つわりの時に気を付けたほうがよいこと

つわりの時には、できれば以下の3つの点に気を付けて過ごすことをおすすめします。
-
1. 心と体を休める
ずは、ストレスを避けてゆっくりと心身を休めましょう。無理をして体に負担をかけると、ストレスも生まれ、心にも負担がかかってしまいます。
妊婦さんが心身ともに健康で「妊娠して幸せ」と感じていることが、おなかの赤ちゃんにとって何より大切なことです。
上のお子さんのお世話があるなど、妊娠中でも思うように休めない方もいるかもしれませんが、周囲の方のサポートもなるべく受けて、できる範囲で心と体を休められるよう意識しましょう -
2. がまんしない
「つわりは赤ちゃんが元気な証拠」などといわれることがあります。しかし、重症のつわり(妊娠悪阻)は赤ちゃんの精神神経発達の遅れとの関連も指摘されていますし、つわりの手当をしたら赤ちゃんが流産してしまうということはありません。
なかには、妊娠中につわりをがまんしたつらい記憶が出産後も残り、次の妊娠をためらってしまう妊婦さんもいらっしゃいます。また、つわりをがまんし過ぎてしまった結果、入院が必要になってしまった方もいます。
つわりは、がまんするものではなく、手当をして克服するものです。一人で抱えたり遠慮したりせず、かかりつけの産婦人科医やご家族、友人などの身近な方々にぜひ相談してください。 -
3. 自分の体調の変化にも気を配る
妊婦さんにとってつわりは、「あって当然」「わざわざ言うほどのことではない」という思い込みがあるのか、医師から「つわりはありますか?」と質問しないと、つわりの有無を話してもらえないことが少なくありません。
たしかにつわりは、10人中5~8人の妊婦さんにあらわれる、ありふれた症状ではありますが、決して「あって当然」のものではないです。
妊娠中の体は、特別な健康状態にあります。だからこそ、ご自分の体調のちょっとした変化にも気付くことが大切です。そして気付いたことがあれば、妊婦健診の際などに遠慮せず医師に伝えて情報を共有し、手当てをしていきましょう。
つわりの時はサプリメントを活用して


つわりの症状があらわれやすい妊娠初期には、「葉酸」を積極的に摂取することが勧められています。「ビタミンB6」を摂取することもおすすめです。この2つの栄養素を意識するとよいでしょう。
しかし、例えば葉酸の一日の必要量である400ugすべてを、葉酸を比較的多く含むイチゴで摂取しようとした場合、最低でも毎日444g食べる必要があります。これはイチゴ約1.5パック分に該当する量です。毎日続けるのは、食事量、栄養面、金銭面などの点を考慮すると、難しいといえるでしょう。レバーなど、ほかの食べ物の場合でも同様です。
したがってサプリメントを使用して摂取するのがよいでしょう。特に葉酸は、厚生労働省もサプリメントから摂取することおすすめている栄養素です。つわりのように食欲や食事量に影響がある時こそ、サプリメントを上手に活用して必要な栄養素を摂取しましょう。
栄養素を意識できるのは、つわりの症状があっても食事ができている場合の話です。食べ物を口にすると戻してしまう「吐きづわり」の症状があるような場合、口にできるものが限られます。まずは「食べられるものを食べる」ことを優先してください。そして食欲や食品、食事量に制限がある時は、サプリメントを上手に活用して必要な栄養素を摂取しましょう。つわりの症状があらわれやすい妊娠初期には、「ビタミンB6」と「葉酸」の摂取がおすすめです。
「つわりがあっても家事や育児、仕事で休めない……」
そんな妊婦さんへのアドバイス

日本では特に、つわりは「がまんすべきもの」というイメージがありますが、本来は症状をやわらげてよいものです。つわりの症状をラクにすることと、おなかの赤ちゃんの健康状態は無関係であることがわかっています。ゆえに欧米では、つわりは吐き気止めなどの薬を使って症状を抑えていくものと認識されています。赤ちゃんが健康でいるためには、お母さんも健康であることが大切です。
「つわりも耐えられないのは甘え」「赤ちゃんのためにもがまんしないと」という考えは変えましょう。つらい時には「つらい」と言ってよいのです。
月経痛をがまんせず、低用量ピルなどで治療する女性が少しずつ増えているように、つわりも手当てをするのが当たり前になっていくとよいですね。
つわりで大変な妊婦さんを支えるために
ご家族や周りができるサポート

つわりがあってもなくても、妊娠中の体は「特別な健康状態」にあります。妊婦さんのご家族や職場の方は、できるだけ気づかってあげてください。
なかには妊娠中でも、いつも通りに家事や仕事をしている妊婦さんもいます。けれども、「家事や仕事ができるから気をつかわなくていい」わけではありません。
もしかしたらその妊婦さんは、本当は体調に違和感があるのに気付いていないだけかもしれません。または、がまんして、がんばっていつも通りに過ごしているだけかもしれません。
つわりの症状が見られやすい妊娠初期は、特別な健康状態にある妊娠期間のなかでも特に、心と体が不安定になりやすい時期です。無意識であってもがまんを続けているとストレスにつながり、つわりの症状が悪化することも考えられます。
働く妊婦さんのなかには「仕事中にはつわりの症状をほとんど感じないけれど、仕事を終えて帰宅したら調子が悪くなる」という方もいます。それは仕事中、気を張って無理をしている証拠です。少しの間でも家事や仕事から解放されれば、ストレスの軽減にもつながります。
つわりは、「あって当然」のものでも、がまんして耐えるものでもありません。もしも、つわりがあるのに頑張ってしまっている妊婦さんが身近にいたら、「つわりはがまんせず、手当てすべき病気である」ことを伝えて、家事を代わったり仕事を休ませたりなど、できるだけサポートをしてあげてください。
